水俣病の被害者たちは「教訓を次世代に生かせ」と語っています

2011年5月1日は、水俣病公式確認から55年目にあたります。
2008年に私たち府中ネットが視察した水俣湾埋め立て地(水俣病の原因となった有機水銀の汚泥を浚渫して埋め立てた公園)の「慰霊の碑」前で行なわれた、「犠牲者慰霊式」関連の記事が、地元紙「熊本日日新聞」に、5月1、2日の両日掲載されていました。私たちが訪ねた「ほっとはうす」の人たちが献花する写真も掲載されています。

いくつもある記事で、水俣病の被害者たちが、福島第1原発の事故について憤っています。「原発事故は胸が張り裂ける思い。水俣病の教訓が生かされていたのか」「チッソにも東電にも最後まで責任を果たさせる責任が国と県にはある」「(損害賠償について)チッソのような被害者を無視するやりかたは繰り返さないでほしい」と訴えています。そして政府の慰霊式参加者へも「水俣病の教訓を福島第1原発の事故への対応に生かすべきだ」との訴えたと報じています。同じように命を軽視した企業が起こした事故であることへの怒りや、差別や風評被害への懸念が、記事から伝わってきました。

さらに、50年にわたって水俣病と向き合ってきた、医師の原田正純さんのインタビュー記事もありました。原田さんは、水俣病でも福島第1原発の事故でも、都市の住民は利益を享受するが犠牲は地方に住む人であること、公共という名の多数の利益のために少数の人たちが犠牲になるのは仕方がないという考えや、差別のあるところに問題が押し付けられているという構造が、水俣以来ずっと変わっていないと述べています。

私たちはこのような歴史の教訓から学び、次世代に生かせるのか? そのことが問われています。しかしその前にまず、同じ日の東京版の朝日新聞では水俣や原発事故との関連記事が見当たりませんでした。都会に住む私たちは、あふれる情報の中で真実を知らされているのかと考えてしまいます。