山田真さんは、小児科医として怒っていました!「いま福島で何が起きているのか〜小児科医が診た放射能と子どもたち」講演会報告
3月2日に開催された小児科医の山田真さん(放射能から守る全国小児科医ネットワーク代表)の講演会には、食べ物に不安を持つ小さな子の親、福島の状況を知りたいひと、原発に反対するひとなど、保育園を運営する「NPOごんべのお宿」主催ならではの多様な人たちが参加しました。
講演を聞いての感想ですが、私が福島事故直後の11年7月に山田さんの講演を聞いた時には、まだ騒然とした世情の中、医師として不確かなデータや情報を広めることを慎もうという気持ちもうかがえたのです。しかし今は怒りに満ちている様子がよく伝わってきました。以下、まとめてみました。
◆この国は…本当に何もしないのだ!
昨年6月に、議員立法でほとんど全会一致で「子ども・被災者支援法」が成立したが、選挙前の対策であり具体的内容は乏しいので、具体策を!と奔走しているが、自民党に変わったこともあり、なかなか実効ある方針が出てこない。なぜだろう…事故から2年もたって、実感していることがある…この国は本当に、広島、長崎を経験しているにもかかわらず、いや、だからこそ「放射能を浴びても安全だ」とものすごい労力とお金をかけて、世界中の広告塔になってきたし、その役割を続けることが使命なのだ。福島の子どもたちに「大丈夫です、気のせいです」といい続けるに違いないのだ。「県民健康管理調査」は「影響が少ない」という結論を前提とし、子どもたちに十分な調査をしないでいる理由がよくわかってきた。
事故以前は、30年くらい医療被曝を告発する活動をしてきた。日本の医療の現場では、X線検査、CT検査が当たり前のように行われ、1回で10ミリシーベルトくらい浴びる。世界で際立つ頻度だ。福島原発事故によって、この問題も注目され盛り上がると期待したが、一向にその気配がないのにも理由があったのだ。
◆広島、長崎、ビキニ…を繰り返してはいけない
探ってみて分かったのは、科学者も医者も低線量被爆を問題にしたら、出世できない、論文が載らない、干されるという、原子力業界の強さ、根深さであった。だから学習する医者も少なく、問題が伝わっていかない。
そんななか、いま福島では、原子力業界の意向を受けた医者・学者たちによって、もともと世界に類を見ないくらい盛んに健診や不必要な検査を勧めてきたこの国で「100ミリ以下なら大丈夫」といい、「検査は2年に1度くらいで大丈夫」と、子どもたちにきちんと検査や調査をしようとしない異常さを考えてほしい。
福島にたびたび診療に行っているが、「安全」が強調されて「風化」が著しいのが福島であるとも感じる。不安視する人には圧力がかけられ、「自主避難」している人たちに何の補償もないことで人々が戻ってきたりしているが、線量は子どもが住んでよいとはとても思えない。福島でも、私たちが広島、長崎、ビキニと繰り返してきた「被害の過小評価」と「忘却」を再び繰り返してはいけない、何とかしたいと本当に思っている。