府中市の「財政計画」を探る③

歳出計画〜〜経常経費は減額、投資的経費増額の??

  今回は歳出計画です。これはお金の使い方の計画です。経常経費と投資的経費(後で説明)それぞれの額を聞きました。
  すると、経常経費の10〜13年の1年当たり見込み額が、当初計画は781億3千万円だったのが、変更計画では770億円に減額となっています。すでに使った08、09年の1年当たりの経常経費の額は、772億6000万円でした。今より減るという計画です。
  投資的経費ですが、10〜13年の1年当たり見込み額が、当初計画は124億8千万円でしたが、変更計画では136億7000万円に増額となる計画です。08、09年の1年当たりの投資的経費の額は57億3000万円でしたから、今後は大幅な増額!です。

  経常経費とは、人件費、日常的な施設の維持補修費、社会保障費である扶助費、借金返済である公債費など、毎年固定的に見込まれる経費です。今後も府中市は人口が増えるし、市民生活に関わる社会保障費はこの経済状況では落とせないと思われるのに、経常経費が減額となる理由が、納得できませんでした。
  投資的経費は、大規模事業に充てられます。例えば学校の耐震改修工事、公営住宅改修、再開発事業などで、事業費も多額です。歳入から必要経費を差し引いた残りをこの経費に充てることになり、この財源の余裕がない自治体も多くあります。なのに府中市は、経常経費が減ってこちらが増えているのが、妥当といえるか、掘り下げる必要あるでしょう。 
  明らかなのは、今回の変更計画での投資的経費の増額の理由のひとつとして、市が一昨年、府中駅南口再開発事業で建てるビルに「事業を成り立たせるため」公共施設を作るとして、「床を買う」資金を盛り込んだことがあるのです。買い取る床の価格は60億円としていますが、金額の根拠は明示されていません。
  一方、府中市には財源が豊かだった頃に建てられた立派な公共施設がたくさんあり、それらが改修の時期にきています。芸術劇場はいま25億円で改修していますが、立派なだけに改修費も多額になります。今回の質問で、これらの公共施設の改修計画を立てていないことが判明しました。新規の、しかも総合計画にも入っていない公共施設建設より、改修計画が先ではないでしょうか。建てたものは大事に維持管理すべきでしょう。

  今後4年間の財政計画を聞いたことで、市長がつねづね「歳入減でも大規模事業は予定通り行なう、市債と基金の増額で補う」と言ってきたことの裏付けが数字でわかりました。しかし13年までの計画を聞いたことで、さらにその先の心配がでてきます。
  この財政計画期間より先(2014年以降)、完成が1年遅れた再開発事業の事業費精算で市負担分が発生しますし、新規の公共施設を再開発地区に作るのならその施設整備費や、大規模公共施設の改修費も見込まれます。投資的経費が今後も必要なのです。大規模事業を見直さない方針のまま、市長が一方で言ってきた「市民サービスを落とさない」ということが、将来にわたって財政的に可能なのか疑問です。将来の市民への負担の先送りを考えると、見直しは必要だと思います。

  3回に分けて「財政計画」について書きました。財政計画の方針や、何を優先させて変更したか、など追及すべき課題も多いのですが、基本資料となるたとえば財源の配分や補助金の根拠などが明らかにされないのが残念です。「財政計画」という巨象の尻尾の先を、全体が分からないまま噛み付いてしまったような思いですが、とりあえず分かってきたことの報告をこれで終えます。