市民科学研究室 上田昌文さんを招いた学習会「放射線リスクのとらえ方〜子どもたちへの影響を考える〜」の報告

  7月3日(日)に、講師に市民科学研究室の上田昌文さんを招いて「放射線リスクのとらえ方〜子どもたちへの影響を考える〜」と題した学習会をルミエール府中で行ないました。簡単にご報告します。

  【原発が爆発した最初の段階で、情報が出されず住民の避難が遅れた政府の対策のまずさが悔やまれる。福島の人々は今も厳しい状態が続いており、チェルノブイリに学べば子どもたちは避難すべきレベルと言える。これから国がやるという県民健康調査が、調査に終わらず、きちんと対象者のケアにつながるかどうか、見守る必要がある。

  府中市近辺の値は今は落ち着いている。対策はあくまで原発が収束に向かうことが前提だが、今の空間線量が示すのは降下物ではなく、今まで貯まった地面からの放射能の影響なので、線量の高い土壌を早く子どもの環境から除染することが必要となる。汚泥や焼却灰に含まれる放射能は、廃棄の基準もなく、今後厄介な問題になるだろう。

  農地の汚染は、根から取り込んで食物に移る。海産物の対策は後手に回っている。しかも食品の暫定基準値は日本はかなり甘い。検査も十分ではない。食物として体内に取り込んだ被曝量は測定が困難で、与える影響も医学的に判っていないのが現実である。

  体内被曝について基準値は考慮していないが、かりに乳児に対し年間0.3ミリシーベルトに抑えたいと思うなら、10ベクレル以上のものは食べさせられないだろう。これは今の日本では理想に過ぎない。私たちはできる限り取り込まないようにするしかない。

  じつは病気の発症との因果関係は、100ミリシーベルト以下の線量では、すべての学者の統一見解になっていない。それが安全性の議論に混乱をもたらしている。しかし、統一見解になっていないだけで、影響は決してゼロではない。ECCRとICRPでは全くリスクの評価が違うが、これが今の科学の限界であることを念頭において欲しい。

  自治体で、独自に計測器を購入し、学校など子どもたちの環境を測定することは必要だが、1回きりで終わらせず、継続して測定することと、値についての評価の基準を自治体が持つことが求められる。千葉県野田市や埼玉県川口市では大気中の放射線量の基準を決めた。子どもたちを守るという姿勢が自治体に求められる。】

  子どもの育つ環境を考えたい方、情報を正確に把握したい方など50人以上もの参加者に、放射能問題への関心の高さを実感しました。議論を今後の活動に生かしていきます。