「地域コミュニティ」を創造するしか道がない――
「未来に向けて協同組合に何ができるのか」と題した内山節さんの講演を聞いて
前回、衆議院選挙直前に女性政策についてP-WAN(ウィメンズ・アクション・ネットワーク)が各政党にアンケートを取った結果をご紹介しました。低い点数ばかりの自民党が議席を増やすことになり、貧困問題、差別や格差の現実はないがしろにされることになるのか、と暗澹たる思いです。
ところで、過ぎ去ろうとしている2012年は、国連の定めた「国際協同組合年」でした。2009年ジュネーブで開かれた「ICA(国際協同組合同盟)」の決議を受けて、2010年に国連が2年後を「国際協同組合年」と定めたことに由来します。
その決議には「われわれは、いまこそ世界経済の行きづまりをもたらした市場原理主義の克服、そのための運動の新たな展開を必要としている」とうたっています。富裕層と貧困層の格差が広まっていく現実の中、グローバルに対立と分断、競争を原理とする経済の仕組みから「参加、協同、共生」を原理とする経済に変わらなくてはいけない、それを担うのが「協同組合」であると宣言したのです。生活者ネットワークも「生活クラブ生協」という「協同組合」を母体とした運動です。私たち自身がこの意義を学び実践する必要があるのです。
12月20日に「協同組合型社会をみんなでつくろう」という集会が開かれ、哲学者の内山節さんが「未来に向けて協同組合に何ができるのか」と題して講演を行いました(主催・生活クラブ運動グループ東京運営委員会)。衆議院選挙や東京都知事選挙の結果を受けた直後で、参加者は誰もが悲壮な心境でした。もちろん内山さんも同じだったはずです。
内山さんは、「絶えず協同組合は危機に直面してきた。それは世界中どこも同じ。しかし2011年の東日本大震災は、バブル崩壊のあと非正規雇用と年収180万円以下の層が広がって既成事実化し、すでに以前の価値(=正規男性社員が支える家族)で成り立つ社会という概念が崩壊したところに起きた。今までの仕組みはもう持たないのだ、作りかえるしかないのだ、と、協同組合運動の考えも変えなければいけない。作り直すことは難しい。壊れるときは弱いものに被害が行く。そこを踏みとどまるしかない」と、「共に生きる経済」を自分たちが作るしか社会が持たないことを強調しました。
自民党政権は、「共に生きる」ための「復興」ではなく、公共事業にお金を回すでしょう。社会保障は「公」の責任ではなく「自助」、自己責任に転嫁するでしょう。
いまこそ、「協同組合」は社会的使命を達成するためや、地域コミュニティを守るための運動だったことを再認識し、大規模化せず、地域で多彩なネットワークを築くことでしか、展望はないかもしれないと、少しの「希望」を持った講演会でした。