浪江町民・鈴木大久さんと小出裕章さんの講演会「福島原発事故後の現実を生きる」に参加して

「除染」と「帰還」ありきではない、住民目線の復興を!と鈴木さん

 4月21日、東村山市の「子どもの未来を考えるゆるやかなネットワーク」主催の表記講演会に行ってきました。最寄り駅から相当歩く場所だったのですが、たくさんの人が集まり、東村山市民の関心の高さを感じました。

  浪江町で4代続く会社経営をしていた鈴木大久さんの報告は重たいものでした。

  「津波で死者300人超、全壊家屋600超もありながら、原発災害による避難で、いま一家バラバラの生活を余儀なくされている。事故当時は国からの指示もなく、放射能の雲が来たと思われる津島方面に避難した町民が多数いる。雨や雪にあたり大量の放射能被ばくがあったと思われるが、避難先で『検査は受けるな』というお達しを受けたりした。
 2年たっても、福島県内は3か月で1ミリシーベルト外部被ばくする状況だが、原発に近い浪江町に昨年12月一時滞在したときは、累積外部被ばく量を、横軸を「時間」としてグラフ化するとほぼ垂直的に跳ね上がる状況で、まだとんでもなく高い。除染してもすぐに元に戻っている。国は間もなく「帰還可能」とするかもしれないが、いま多くの町民は「もう戻れない」と思っている。

 国や県、東電、町当局は「復興」=「帰還」がすべての計画の既定路線になっていて、そのことで利害が一致しているといってもよい。安全を強調するためや、人がいないと行政が成り立たない、金銭の補償は負担が大きい、などという理由だが、とても住民目線だとは言えない。そのために意味のない除染をしているが、いったい誰のためなのか。

 ふるさとの再生は本当に必要だが、帰る、帰らないで住民同士争うのではなく、いのちと暮らしを第一にした「復興」を今模索し「FOR LIFE FORUM NAMIE」を立ち上げ、ネットワークづくりの活動をしている。
 
今、いわれなき差別が避難者に降りかかっている。クレジットカードの更新を断られたり、不動産屋さんから賃貸を断られたりして、生活の困難に直結している。ひとには様々な価値観があってよいが、対立するのでなく、通常の状態でない人々に対して選択の自由を保障する仕組みをお互いに作りあうことが、本当の復興のために必要だと考えている…」

 お話をきいてやりきれない気持ちです。やはり本当のことは知らされておらず、「帰還前提」の報道に浸されていては真実など見えないのが実情でした。

 福島原発の状況も深刻です。鈴木さんに続いての小出裕章さんの講演でも、知らされていないことが身に染みました。
 
「『収束』どころか、事故を起こした原発は放射能を出し続けており、いまだに近づけない、どうなっているか誰も確認できない現状で、しかもこれが何年続くかもわからない。その間何か起こったら…今回の事故の責任は全くない子どもたちだけは何とかしたい」と。半永久的に続く事故処理。負債を将来の世代に背負わせる責任の重さを、小出さんは強く訴えました。

 事故以前は、年間1ミリシーベルトの被ばくでも問題だったのです。今では、毎日2億4000万ベクレルの放射能が福島第一原発から漏れ出しているという記事(『世界』4月号)もあるなかで、「放射能は危険」の常識すら通せない時代になりました。反原発運動と危機感の共有がどうすれば東京で持続するのか、それはあなた方で考えてください、でないと原発はなくなりませんと、2人が共通に参加者に宿題を出しました。