府中市議会では、原発の再稼働反対の意見書を求めた陳情は不採択となりました

 11月21日に「エネルギー政策を考える府中市民の会」が「川内原発をはじめとする原発再稼働に反対し廃炉とし、原発ゼロ政策への転換に向けた意見書」を採択するよう求めた陳情を府中市議会に起こしました。同時に署名活動も開始しました。
 まず、12月3日に総務委員会で審議されました。どの委員も「原発は将来的にはなくすべき」といいつつ、しかし原発がないと経済が成り立たないという意見が多数で、福島原発事故や廃棄物処理を問題として、陳情は採決すべきとした意見は少数にとどまり、不採択となりました。
 本会議での議論は、衆議院選挙翌日の12月15日でした。署名の提出が668筆にのぼったとの議会事務局の報告のあと、議員全員による採決が行われました。生活者ネットワークは、ここで採択を求めて意見を言いましたが、採決により、陳情に賛成は25人中10人にとどまり、やはり不採択となりました。
 原発再稼働の是非が市議会で議論になったことは特筆すべきことですが、国政の党の考え方に規定される議員の数の壁を超えることができず、残念です。

 以下、生活者ネットワークの本会議意見です。

 ただ今、総務委員長から原発再稼働に関わる国への意見書を求める陳情について、不採択との報告がありましたが、生活者ネットワークは総務委員会に委員がおりませんので、この場で意見を申し上げます。

 委員会ではどの委員も、原発は将来的になくすべきである、と意見を述べられていました。福島第一原発がいまだに汚染水の処理もままならず、事故の全容も解明できず、これからどれだけ事故の処理に費用と時間がかかるか予想できない事態を前にすれば、当然のことだろうと思います。いったん事故が起きれば、取り返しがつかない環境の汚染と人々の生活の破壊をもたらすことを福島の事故は証明しました。
 しかし、原発がなくては経済も生活の豊かさも維持できないではないか、すぐに廃炉は無理である等の理由が結果的に多数を占めましたが、改めて陳情に採択を求めます。

 採択理由として委員会では出されていなかった原発にかかるコストの問題について申し述べます。
 原発は安いと言われてきましたが、立地対策費、事故対策費などの社会的コストは、私たちの税金や電気料金に上乗せされており、電力会社は自ら支払っていません。東電は福島の事故で、すでに賠償資金4兆5782億円を受け取っているとされますが、これにも私たちの税金や電気料金が含まれる仕組みが作られました。これらを自ら負担するリスクを負ったら、原発事業は到底成り立たないはずです。
 再稼働するのであれば、国と電力会社は、「経済性もなくリスクも大きい、事故が起きたら巨額のコストがさらに発生する、それでも動かすのだ」という説明をきちんと国民に行なうべきです。

 また、原発から生み出された放射性廃棄物は、福島の事故以前から日本で再処理もできず、処分もままならない状況でした。しかも廃炉を今すぐ決断したとしても、原子炉をはじめとする高レベルの放射性廃棄物の処理処分の技術は確立しておらず、どのくらいコストがかかるかもわからないと言われています。
 原発によって国の豊かさそのものが失われる可能性があるとしたのが、陳情者が力説した、大飯原発差し止め訴訟の判決でした。54基もの原発を抱えてきた日本で、これまで原発を動かすために費やしてきた技術は、この機会に廃炉に向けて生かすべきでしょう。それが、類を見ない福島の事故から得られる教訓ではないでしょうか。リスクの大きい原発を再稼働させることで、将来世代や環境への負担を押し付けることは、本当の国の豊かさや人々の生活を保障するものとはなりません。

 私たちは、地方に危険な電源を押し付けてきたことを振り返り、「国の豊かさとはなにか、そのために原発は必要か」と、福井地裁の判決を受けて立ち止まって考え、原発の再稼働を見直す時だと思います。採択を主張します。