◆バイオ施設で行なわれる実験に、住民は知る権利がある。

市と衛生研は応えられるか…?

 浅間町の府中基地跡地への国立医薬品食品衛生研究所(衛生研)移転計画は、施設の安全性に対する疑問の声があるなか、移転に向けて着々と既成事実が積みあがっており、すでに生態系調査も行なわれています。
 私は10月初旬、大阪府吹田市に「基地跡地対策特別委員会」の視察に行き、行政担当者の話を聞いてきました。吹田市はバイオサイエンス施設の建設に反対運動が起こったことから、「遺伝子組み換え施設に係る環境安全の確保に関する条例」を平成6年に定めています。個々の施設と安全協定を結んだり、指針を作った自治体はあっても、立ち入り調査などに、より強制力のある「条例」を定めているのは未だに吹田市だけです。条例は「必要ない」とする国の反対を押し切ったという制定時の苦労も聞きましたが、以来十数年たった現在も抱える課題を聞き、考えさせられました。
 条例で報告義務があるのは遺伝子組み換えの実験だけ、それも設備や機器に係わるもので、実験の詳しい内容や方法までの報告義務はないし、組み換え以外の感染症菌や放射性物質を扱う実験は「国の法令があるから」と、条例に反映させることができませんでした。そして制定時の予測を超える施設数の増加と、実験や扱う菌のレベルが高度化している現在、「私たちには化学の知識はありません」と、行政のレベルが追いつけない悩みが窺えました。
 議会と衛生研との(すれ違う)議論の中でわかってきたのは、国の法令の範囲の、限られた報告義務に基づいて「安全」であると言っていることです。そこに厚い「情報と知識の壁」がありますが、自治体は住民の安全を守る責任があります。吹田市が国に意見したように、府中市長も「住民の不安の声がある以上、移転は認められない」という議会での答弁を貫く姿勢を示してほしいと思います。

★11月9日(日)PM2時〜 新町文化センターで、川本幸立さん(千葉県議会議員、バイオハザード予防市民センター幹事)を招いて学習会を開きます。バイオ施設と安全協定を結んだ地元の当事者としての経緯と、施設の危険性についてお話をうかがいます。ぜひご参加ください。