「代理出産を問い直す会」代表の柳原良江さんから、アメリカの現状のDVDを見てお話を聞き、生殖技術と女性のからだの収奪について考えさせられました。

 11月23日、女性センターで行なわれた「第28回府中市男女共同参画推進フォーラム」企画による講演会「産む、産まない、生まれるいのちを考える〜女性のからだと生殖医療」に参加しました。講師は「代理出産を問い直す会」代表の柳原良江さんです。

 この会は、2008年、代理出産を巡ってメディア上で問題になった時、第3者がかかわる生殖技術があまりに医学や科学の側面だけで取り上げられることに違和感を持った研究者により発足し、生命、人の価値、体の収奪など、倫理の面での問題点を研究・告発してきたということです。

DVDの原題は「Eggsploitation」。「eggs(卵子)と「exploitation(収奪)をつなげた言葉…

 まず、会が日本語版を制作した「卵子提供〜美談の裏側」というDVDを見ました。アメリカで「人助けになる」という誘い文句で、リスクはほとんど知らされず卵子を提供した女性たちが、大量のホルモン剤、排卵誘発剤や医療手段によって、信じられない体の破壊を経験した事実が描かれていて、衝撃的でした。
 若い健康な女性がターゲットになっていました。報酬の代償として卵子を提供した女性の健康状態の後追い調査は、病気の治療ではないため、なされていませんでした。契約では、具合が悪くなっても止められない、卵子提供の事実を他人に知らせてはいけないなどとなっています。いまアメリカの不妊治療は数千億円規模の巨大産業になっています。

 このような事実は、不妊治療者の救済やライフスタイルの多様化、女性の自己決定権の拡大と言って済ませられる問題ですか?!と柳原先生は問い返します。
 卵子提供した女性や代理母の実態はあまりに知らされてこなかったことが問題です。男性のからだの収奪であれば、こんな事実はきっと社会は放置しないと考えると、これは女性差別です。さらに他者の身体を利用しても子どもを得たいという女性に対し、経済的に弱者である女性が被害者となっているという、女性どうしの見えにくい差別構造でもあると指摘します。

 

 この秋、日本でも卵子提供や代理出産を認めようという法案が出される予定でした。見送られましたが、時間の問題でしょう。しかし法案は、実態だけでなく、生まれてくる子どもたちのリスクなどに、あまりに考えが及んでいないもので、人権にかかわるといいます。
 この映画を観て、参加者は「こんな事実は知らなかった…」と驚きの感想を述べていました。多くの人が事実を知って、法制化されると、日本でどうなるのか、考えるべきだと思いました。