北多摩1号水再生センターに新しく作られた「連絡管」見学報告

生活基盤を支えるインフラの、維持管理のための電気・エネルギー使用量に驚き!

 都市に住む私たちの生活に欠かせないインフラ「下水道」。生活排水の終末処理の現場をこの目で確かめたいと、北多摩1号水再生センターを、6月27日に見学してきました。北多摩1号水再生センターは、小平市や国分寺市、府中市50万人分の下水を広域処理する東京都の施設ですが、府中市の小柳町にあり、1983年に運転開始しています。

施設の壁に書かれた連絡管の模式図で、多摩川の下を通るようすを説明する所長さん。

 2011年には、放射能を含んだ焼却汚泥の保管の様子を見せていただいていますが、今回は主に下水道本管と、昨年10月に作られた、南多摩水再生センターとの「連絡管」を見せていただきました。
 そもそも、多摩川の「流域下水道」は、都市化と人口増加ともに、家庭や工場の排水が多量に流れ込み、水質汚濁が大きな問題となったことから、水質浄化対策として整備されたもので、全部で6か所あります。
 そして、ここ数年は、施設の維持・更新のときに相互に汚泥や汚水を融通するためと、震災時のバックアップ機能のためということで、多摩川を挟んだ2つの水再生センターの川の下を「連絡管」で通す工事が進められてきました。ご存知でしたか? 私も、多摩川上流水再生センターに2011年の震災後に視察に行って、巨大さに驚きました。

 北多摩1号水再生センターの所長さんは、多くの人にこの事業を知ってもらおうと「見える化」を進めていることを話されました。入り口近くにも施設の様子を模した展示がたくさんあり、掘削をしたシールドマシンもありました。この「連絡管」は内径3.5mものトンネルを掘って、中に汚水や汚泥を相互に融通する管を通したものです。ケーブルなども引いていました。中央高速道や多摩川の下を通り、3.3キロもの長さで、今のところ日本一です。総工費97億円ということでしたが、連絡管設置の目的上の運用は今のところ行なっていないそうです。

入り口近くにある連絡管の内部の模型。だれでも入れます。汚水と汚泥の管が中に通る仕組みがわかります。

施設全体は、水浄化の要である高度浄化処理装置を備えた沈殿池のほか、緊急用のディーゼル発電設備や、汚泥焼却炉などもある、広大で大規模なものです。このように多額の費用と電気を使い、私たちの生活排水がそのまま多摩川に流されることを防いでいるわけです。
 見学後の質疑で、水質の保持と電気使用量や処理費用との兼ね合いが、震災後は特に悩ましいという現場の実情がわかりました。「費用と電気を使えばきれいにできますが、どこまで必要かは皆さんも考えてください」というお話でした。

 

ほんものの連絡管の様子。このまま、3.3キロ続いています。

 東京都全体の水再生センターで合わせたら、都下の電力使用量の1%を占めるということでした。すごい量です。森や畑や田んぼやといった自然の浄化の許容量を超える都市化や化学物質の氾濫が原因で整備された終末処理施設です。1日もなくてはならない、震災時も必須のインフラですが、それを支えるための「必要経費」も多大であると実感しました。ぜひ見学してください。