第16期自治政策講座 〈5月13日・横浜〉「これからの自治体政策-持続可能な社会への視点」参加報告

第2講義「TPPと自治体の課題-グローバル経済と地域再生の道」 
 講師 鈴木宣弘さん(東京大学教授)

 TPPは国を滅ぼす!と訴える急先鋒の論客です。農水省官僚だった鈴木さんは、農業を悪玉にし、国民にウソとごまかしを重ねて、農産品だけでなくさまざまな国民の命や健康ないがしろにする、たとえば添加物、薬剤、保険、遺伝子組み換え、BSEなどの規制の撤廃を呑み込まされてきたのだと、政府交渉の内情を暴露しました。いま交渉で踏みとどまっているように見えるコメなどわずか数品目も「今だけ、自分だけ」良ければよい、「金だけ」儲かればよいという、長期的視点に立って日本の本当の国益を考えようとしない企業者の立場に立った官僚の交渉では、「断固反対」と言っている姿勢が崩れるのも時間の問題ではないかと言います。
 これほどまでの状況とは…と暗澹としました。「学校給食に地場産の農産物を使います」などと言えば、「ISD条項」(*)で近い将来アメリカから訴えられるかもしれない、との冗談ともつかない話も出ました。 
 日本の農業を解体し、そこから培われてきた地域社会や伝統文化を破壊するTPPに、地域で議員は反対の声を挙げてくださいとの訴えに、地方から来た議員は、酪農や農業が切り捨てられると、危機感を抱いていましたが、私たちも、子どもたちの未来の食べ物や命の問題です。「安さだけ」を追求することは、いのちを削り次世代に負担を強いることにつながると自覚し、地域の食と農の価値を再確認する大切さを痛感した講座でした。
 (*TPPの本丸は、ISD条項を通じて、アメリカのグローバル企業が相手国を提訴し、法的に影響力を与えることだと言われています。鈴木さんは「毒素条項」と言っています)

第1講義「地方制度調査会答申と自治の仕組み」の報告は田村ちえみのホームページをご覧ください。